はじめに
会社法違反(特別背任)等で起訴されているカルロス・ゴーン氏が,保釈条件に違反して,海外に出国したとか。
本人が,ビデオで,レバノンにいると言っているのだから,本当なんだろう。
このことで,裁判官や弁護人を非難する人もいるようだが,まず,法律・制度を確認する必要がある。
法律の定め
保釈請求があったときは,次の例外の場合を除いて,保釈を許さなければならない(刑事訴訟法89条)。
例外(簡単な表現にしているので,正確性は若干犠牲になっています。)
- 基礎されている事件の刑が,死刑か,無期又は短期1年以上の懲役又は禁錮であるとき
- 被告人が前に死刑か,無期又は長期10年を超える懲役又は禁錮の刑が定められている罪で有罪となったことがある
- 被告人が,常習として,長期3年以上の懲役又は禁錮の刑が定められている事件を犯したとして起訴されている
- 罪証隠滅の疑いがあるとき
- 被告人が,証人等を脅迫する疑いがあるとき
- 被告人が氏名不詳又は住所不明である
例外の場合でも,保釈することが適当だと裁判所が判断したときは,裁判所は保釈することができる(90条)。
逃亡すると疑われるとき
被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは,被告人を勾留することがあり得る(60条1項3号)。
では,なぜ,逃亡する疑いがあることが,保釈の例外にならないのか?
それは,逃亡の危険は,保釈保証金で抑えることが予定されているからだ。
被告人が,呼び出されて出頭せず,あるいは逃亡し・逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは,保釈は裁判所によって取り消される可能性があり,取り消るときは,裁判所は,保証金の全部又は一部を没取することができる(96条1項1・2号,2項)。
保証金の額は,被告人の資産も考慮して決める(93条2項)ので,被告人が,保証金と逃げることを天秤にかけて,逃げることを選ばないような金額を保証金の額とするのである。,
本件では
本件の保釈では,出国しないという条件が附されていて,被告人はそれに違反したということらしい。
条件についても,逃亡の危険と同じで,違反すれば保証金を没取される可能性があり,これで違反しないようにさせることになる。
被告人が,附された条件に違反したとなると,保証金の額が低すぎたということになるのかもしれない。
ただ,保証金は15億円だったらしい。
15億円の保証金は,歴代第2位だそうだ。
裁判官は,15億円なら安くないと思ったんだろうな。
余談
それにしても,パスポートは弁護団が預かっているというし,例えプライベートジェットを使ったとしても,出国手続きを取らずに出国することはできないだろうし,どうやって出国したのか,謎だな。
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