信条等により差別されないことと、思想及び良心の自由とについて、憲法上の保障の意味を比較せよ。[昭和48年第1問] -- 答案構成 -- 1.「信条等」と「思想及び良心」の違い 同じ 2.14条と各人権規定との関係 適用場面 違憲審査基準 -- 答案 -- 一、憲法14条1項は「すべて国民は、法の下に平等であって、…信条…により、…差別されない」と規定し、憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と規定する。憲法14条は、平等を保障し信条を理由に差別されないことを保障する規定であり、19条は自由そのものを保障する規定である。 この両保障の意味について検討する。 二、まず、それぞれの規定にいう「信条」と「思想及び良心」が同じものであるかどうか、検討する。 まず、14条にいう「信条」とは、広く宗教上・思想上・政治上の主義を含むと解する。単なる政治的見解までも含まれるかについては争いもある。しかし、14条1項に列挙された事項は例示列挙であり、その適用範囲は列挙された事項に限定されず、差別は広く禁止されると解される。したがって、単なる政治的見解も含まれると解すべきである。 次に、19条にいう「思想及び良心」とは、諸外国の立法例によると信仰の自由を意味するが、日本国憲法では別に信仰の自由は保障されているので、個人の人格的な内面的精神作用を広く含むと解する。事実の知・不知や是非弁別の判断なども含まれるとする説もある。しかし、19条は個人の内心を保障する規定であり、その保障は絶対的であると解されるので、その範囲は限定的に解すべきである。 以上より、人格的な内面的精神作用には14条と19条の双方が適用され、それに含まれない程度の主義や見解などは、14条の適用のみを受ける。 二、では、適用範囲の違いはなぜ生まれ、また、重複して適用される部分についての両条の適用関係は、どうなるか。 まず、適用範囲が異なるのは、両条の保障しようとする権利の違いによる。14条は、平等を保障しようとする規定である。平等が保障されなければならないのは、個人の尊厳(13条)に由来するのであり、そこでは、不合理な差別は、何を基準とするものでも許されない。したがって、広く政治的見解も、そこにいう「信条」に含まれると解されるのである。これに対し19条は、内心そのものを保障しようとするものであり、それが人格に直結するものであることから、絶対的に保障しようとするものであると解される。そのことから逆に、人格に直結しないような精神作用は、そこにいう「思想及び良心」には含まれないと解される。そこで、たとえば謝罪広告を判決で強制することも許されると解される。 次に、重複して適用される範囲についての両条の適用関係は、どうなるか。これは、平等違反であるかと、思想良心の自由を侵害しているかによって決まる。たとえば、ある主義を抱いているが故に不利益を科せられた場合は、14条違反であると同時に19条違反にもなる。しかし、ある主義を抱いているものを特に優遇する場合は、平等違反であるが、思想良心の自由を侵害したとはいえないので、14条には反するが、19条には反しない。 以上。