実務参考判例
- 民法
- 95条
- 遺産分割協議が要素の錯誤により無効とされた事例(東京地判平成11.1.22判時1685→控訴)
- 210条
- 接道要件を満たすための囲繞地通行権は認められず,更に一建築物一敷地の原則を否定する結果になるとして囲繞地通行権が否定された事例(第三小法廷判平成11.7.13判時1687)
- 415条
- 悪天候のため外国の目的外空港に降機された日本人に対し日本語による説明をしなかったことが,目的地まで送迎する義務の不履行に当たるとされた事例(大阪高判平成10.11.17判時1687→確定)
- 424条
- 債務者が任意整理を委任した弁護士に配当財源を確保する目的で信託的債権譲渡をし,当該弁護士が裁判所における破産管財事務を実施した場合と同様の配当を実施した場合,形式的には詐害行為取消しの要件を満たすとしても,一般債権者による詐害行為取消権の行使は権利濫用として許されない。(東京地判平成10.10.29判時1686→確定)
- 446条
- 母体行が,経営不振のノンバンクのために債権者に対し「今後弊行は,兵銀ファクター株式会社の経営改善には万全の支援体制で望む所存であり,貴社に対する債務履行にはご迷惑をおかけしないよう十分配慮する所存であります。」との念書を交付した場合に,保証契約の成立が否定された事例(東京地判平成11.1.22判時1687→確定)
- 541条
- 判旨1:ゴルフ場営業目的の土地賃貸借契約にも信頼関係破壊の法理は適用される。
判旨2:銀行取引停止処分を受けた場合は無催告解除ができる旨の特約が付され,賃借人が銀行取引停止処分を受けた,その後の地代の支払は第三者がしているなどの事情がある場合,信頼関係を破壊しない特段の事情は無い(東京地判平成11.1.27判時1686→控訴)
- 709条
- 「三洋電機冷蔵庫PL事件」
判旨1:間接事実の積み重ねにより火災の発生原因を特定した事例
判旨2:製品の製造者には製品の安全性を確保すべき高度の注意義務があり,製造者がこの義務に違反して製品を流通に置きこれによって消費者が損害を被った場合には製造者は不法行為責任を負う。
判旨3:消費者が製品の通常の使用目的に従って使用していたがその製品に故障が発生した場合,特段の事情の認められない限り,製品が流通に置かれた時点で欠陥が存在していたものと推認される。
判旨4:製品が流通に置かれた時点で製品に欠陥が存在していた場合,製造者に安全性確保義務違反の過失があったものと推定される。
判旨5:火災による動産の滅失について民事訴訟法246条が適用された事例(東京地版平成11.8.31判時1687→確定)
- 職場外の飲み会におけるセクハラについて,会社に対する損害賠償請求が認容された事例(大阪地判平成10.12.21判時1687→控訴)
- 不作為義務の義務違反物除去の代替執行が執行不能となった場合に更に義務違反物除去の間接強制が認められた事例(東京地決平成11.1.18判時1679)
- 準備書面における表現が第三者に対する名誉毀損に当たると認められた事例,名誉毀損に当たるが損害賠償を求め得るほどの違法性はないとされた事例(東京地判平成10.11.27判時1682)
- 本案提訴は不法行為を構成しないが,保全申請は不法行為を構成するとされた事例(東京高判平成10.1.20判時1683→確定)
- 会社の取締役お呼び幹部従業員が独立して競業会社を設立した際に従業員を引き抜いたことが不法行為に当たるとし,民訴法248条が適用された事例(大阪高判平成10.5.29判時1686→確定)
- 判旨1:障害年金を受給していた者が不法行為によって死亡した場合,障害年金の現在額が逸失利益となる。
判旨2:子の加給分及び配偶者の加給分は逸失利益とはならない。
判旨3:障害年金の受給権者の死亡を原因として遺族年金の受給権を取得した者があるときはその者につき支給を受けることが確定した遺族年金額の限度でその者の損害額から控除すべきであり,その損益相殺的な調整をはかることができる損害は財産的損害のうち逸失利益に限られる。(第二小法廷判決平成11.10.22判時1692)
- 「刑事第一審の判決において罪となるべき事実として示された犯罪事実,量刑の理由として示された量刑に関する事実その他判決理由中において認定された事実について,行為者が右判決を資料として右認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には,右判決の認定に疑いを入れるべき特段の事情がない限り,後に控訴審においてこれと異なる認定判断がされたとしても,摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由があるというべきである。」(第三小法廷判決平成11.10.26判時1692)
- 929条
- 「優先権を有する債権者の権利」に当たるためには,対抗要件を必要とする権利については被相続人の死亡の時までに対抗要件を具備している必要があるので,相続人が存在しない場合・限定承認された場合は,被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者は被相続人が死亡した時点で設定登記がされていなければ他の相続債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗できない。
相続財産管理人は全ての相続債権者及び受遺者のために法律に従って弁済を行うのであるから,弁済に際して他の相続債権者及び受遺者に対して対抗することができない抵当権の優先権を承認することは許されない。(一小判平成11.1.21判時1665判例評論488)
- 1031条
- 遺留分権利者が被相続人による共同相続人に対する贈与を減殺した場合,その贈与によって当該相続人が当該物件を短期時効取得した場合でも,それによって右減殺の効力は失われず,遺留分権利者への権利の帰属が妨げられるものではない。(第一小法廷判平成11.6.24判時1687)
- 区分所有法
- 共有部分
- マンションの敷地のうち,店舗等としての専用使用権が認められていた部分について,月額1万円で駐車場としても使用できるとする決議が,専用使用権を剥奪するものではなく,有効であるとされた事例(東京高裁判決平成11.5.31判時1684→上告)
- 31条
- 駐車場専用使用権の利用料を増額する旨の規約・細則の改定が「特別の影響」を及ぼさず専用使用権者の承諾が不要であるとされた事例(第二小法廷判決平成10.10.30判時1663判例評論488)
- 駐車場無償専用使用権の消滅決議は「特別の影響」を及ぼすので専用使用権者の承諾が必要であるとされ,駐車場無償専用使用権の有償化決議が「特別の影響」を及ぼすか否かはそれが社会通念上相当なものであるか否か等についての検討が必要であるとされた事例(第二小法廷平成10.11.20判時1663判例評論488)
- 自賠法
- 3条
- 「現場車上渡し」との約定で鋼管くいを運搬したトラック運転手は,手伝った玉掛け作業が鋼管くい落下の原因ではなく,「他人」であるとされた事例(第二小法廷判平成11.7.16判時1687)
- 商法
- 295条
- 会社が倒産した場合,社内預金の払戻債権は雇用関係に基づき生じた債権に当たらない。(札幌高判平成10.12.17)
- 506条
- 商人の相続人が現実には営業を承継しなかった場合でも,当該商人の代理人の代理権は消滅しない(東京高判平成10.8.27判時1683→上告)
- 保険法
- 自家用自動車総合保険契約の他車運転危険担保特約にいう「常時使用する自動車」とはその使用状況に鑑みて,事実上被保険者らが所有しているものと評価し得る程の支配力を及ぼしている自動車を指すものとし,それには該当しないとされた事例(東京地裁判決平成11.2.9→確定)
- 製造物責任法
- ジュースに混入した異物により咽頭分を負傷したことを認めた事例,異物を特定できなくともジュースの欠陥を認定した事例,粘膜下出血による精神的・肉体的苦痛による損害として慰謝料5万円を認めた事例(名古屋地判平成11.6.30判時1682)
- 特許法
- 100条
- 方法特許権者は,当該方法を使用して品質規格を検定した物の製造販売を差し止めることはできない(第二小法廷判平成11.7.16判時1686)
- 商標法
- 4条1項15号
- 著名商標につき,企業の倒産後も著名性が継続し,商標の譲受人の営業規模が小さくても譲受けによって譲受人の著名商標となったとされた事例(東京高判平成11.4.13判時1685→上告)
- 36条
- 国内の商標権者と国外権利者との間に,その出所,由来の同一性を肯定でき,同一人と同視し得るような特別な関係があるとは認められないとされた事例(東京地判平成11.1.18判時1687→確定)
- 人身保護法
- 被拘束者が現在良好な養育環境の下にあることは,拘束の違法性の判断を左右しない。(一小判平成11.4.26判時1679)
- 貸金業法
- 43条
- 支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払い込みによってされたときであっても,特段の事情がない限り,貸金業者は右払い込みを受けたことを確認した都度直ちに受取証書(18条1項)を債務者に交付しない限り,有効な利息の債務の弁済と見做すことはできない(一小判平成11.1.21判時1667判例評論488)
- 銀行設置のATMを利用した返済について,43条1項にいう任意の利息の支払と認めた事例判決(東京高判平成11.5.27判時1679)
- 労働法
- 年次休暇時季指定権の行使が権利の濫用に当たるとされた事例(東京高判平成11.4.20)
- 民事訴訟法
- 訴えの利益
- 遺言者がアルツハイマー型老人性痴呆により心神喪失の状況にあったとしても,推定相続人が遺言無効の確認を求めることはできない(第二小法廷判決平成11.6.11判時1685)
- 312条
- 上告理由としての理由不備とは,主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けていることをいうところ,そもそも再抗弁の摘示がない場合は,その再抗弁について判断していなくとも,判決自体はその理由において論理的に完結しており,理由不備とはならない。(第三小法廷判決平成11.6.29判時1684)
- 支払督促事件においては,第三者が異議を申し立てることはできない。(浦和地判平成11.6.25)
- 民事保全法
- 52条の2
- 監護権者と指定された母から父に対する子の引渡審判申立てに伴う子の引渡仮処分申立てが,保全の必要性が認められないとして棄却された事例(東京高決平成11.5.6判時1686→確定)
- 破産法
- 72条
- 専ら債務者(債権譲渡人)の支払停止後における債権回収を目的とし,支払停止後に第三者対抗要件を具備することなく,一般の債権者に優先して排他的に目的債権を取得するために,効果の発生時を債務者の支払停止時とする条件付の債権譲渡については,信義則に照らし,破産法72条1号又は2号の準用により否認することができる。(東京地判平成10.7.31判時1655,判評489)
- 74条1項
- 債権譲渡とは異別の非典型担保たる集合債権譲渡(担保)においては,譲渡担保契約時に当事者感において担保権が現実に発生していると解される以上,右時点において権利設定の効力が生じたというべきで,右時点が本条所定の15日間の起算点である。(大阪地判平成10年3月18日判時1653)
- 優先債権
- 会社が倒産した場合,社内預金の払戻債権は雇用関係に基づき生じた債権に当たらず,優先権ある破産債権には該当しない。(札幌高判平成10.12.17)
- 国際私法
- 契約責任の有無及び立証責任の問題は法例7条2項によるが,「表見証明」「一応の推定」は訴訟法的性格を有するので,法廷地法による。(東京地判平成10.5.27判時1668,判評489→控訴)
- 製造物責任についても法例11条が適用される。(東京地判平成10.5.27判時1668判評489→控訴)
- 刑事訴訟法
- 捜査
- 傷害被告事件について、被害者の犯人識別供述が信用できないなどとして,無罪が言い渡された事例(大阪地判平成16.4.9判時1153)
- 科学的捜査
- 警察犬による臭気選別の結果につき,証拠能力は認めたものの高度の信用性(証拠の証明力)を否定した事例(京都地判平成10.10.22判時1685→控訴)
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